傭兵という職業はおよそ文明というものできた古代から現代まで続く長い歴史を持ち、私たちの学ぶ高等教育の歴史の中でも傭兵は幾度か重要な主人公として表舞台に立っています。たとえば古代ローマ帝国を滅ぼしたゲルマン傭兵隊長オドアケル、三十年戦争初期に手勢の傭兵を用いて連戦連勝を収めた傭兵隊長ヴァレンシュタイン。しかし、歴史の節々にあらわれてくる傭兵は、決まって粗暴で血なまぐさく、忠誠心を欠いた登場人物として描きだされています。
こうしたイメージは一部では冷戦の終了とほぼ同じくして現れた“新しい傭兵”である民間軍事会社にもしっかりと植えつけられて、その重要性と可能性はその機密性と相まって見過ごされてしまったように思えます。確かに民間人を無差別に銃撃したとされるブラックウォータ事件や悲惨な人権侵害を行ったイラクのアルグレイブ収容所での虐待に民間軍事会社がかかわっており、こうした状況に対し何らかの処置をとる必要性はあると思われます。だけれどもそれだけで民間軍事会社を全面的に禁止してしまうのは明らかに早急すぎるし、また今の状況から引き返すには遅すぎます。なぜなら新しく現れたこの民営企業の業務分野は戦闘の手段や兵器の多様化とともに広がり、いまや政府に具体・積極的な軍事活動を提供するだけではなく、国民軍の訓練、情報分析(インテリジェンス)、情報戦、兵站、重要施設などの警備、治安警備、高度な技術を要する兵器の使用などのサービスをこなしており、このサービスは先進国のみならず、貧弱な国民軍を抱えていたり、治安の崩壊している破綻国家の立て直しにも幅広く必要とされているからです。加えて最近では、一部の民間軍事会社は国連の監督のもとでのリベリア国民軍の訓練や地雷撤去などの分野で成果を上げています。
さて私の会議ではこうした背景から、会議を進めていただこうと思います。議題自体は長年実際の国連で話し合われているものですが、コンセンサスに程遠い決議の採択が行われており、この溝をどうにかするべく議論を尽くしていただきたければ幸いです。
<Key Words> 傭兵 民間軍事会社 国際人道法 人権 自決権
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