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第3次国連海洋法会議(3rd UNCLOS)

議題
The Establishment of the United Nations Convention on the Law of the Sea
国連海洋法条約策定における諸問題の検討
会議設定

募集人数19名
会議監督福田 雄一  
(京都研究会 京都大学法学部3回 生)
議長佐藤 愛子  
(神戸研究会 神戸市外国語大学外国語学部3回 生)
秘書官服部 岳理
(京都研究会 同志社大学法学部3回 生)
使用言語日本語/日本語/英語 (公式/非公式/決議)
新国際経済秩序 ――――――
平等と自由とは、どのように両立できるのでしょうか?
そして、どのようにすれば新たな制度に反映できるのでしょうか?
国割り
国割りはこちら国割りからご覧になれます。
議題解説
レアアースを始めとする豊富かつ膨大な資源を有する深海底は、自由海論を基盤とするグロチウス思想に端を発した伝統的な海洋法においては規律の対象とされていませんでした。しかし、科学技術の進歩により、海洋先進国による深海底およびその資源の分割・独占が近い将来に現実のものとなると考えられるようになりました。1967年の国連総会における、地中海の小国マルタのパルド代表による演説が契機となり、深海底をめぐる規律の設計を国際社会として行う必要があるという機運が生じました。この流れは、「誰のものでもない」深海底を「誰が、誰に対して、どのように」開発する方式をとるのかを規律することによって、技術的に優位に立つ海洋先進国が深海底の天然資源を“自由”に独占することを防止し、深海底の資源開発を国際的に規制し、そこから得られる利益を国際社会全体、特に南側諸国にとっての南北問題の解決という“平等”の実現のために利用するという、新国際経済秩序概念の具体化につながる性質を強く帯びたものでした。
今会議では皆さんに35年の時をさかのぼっていただき、『「人類の共同遺産」たる深海底の資源開発をどのように制度化していくのか』を議論していただきます。具体的には、約10年にわたり開かれた史実の会議における膨大な論点の内から、会議監督がピックアップした数点(探査・開発の方式、国および私企業の開発権、資源生産制限の是非等)について、史実同様に、議論を行っていただきたいと思います。
この会議の最大のテーマは、国連海洋法条約の深海底の部分を題材にして自由と平等の関係を考えることです。海洋先進国は、伝統的なグロチウス自由海論に則り、各国が開発可能な深海底の資源開発を自由に行うことが、南側諸国の発展を含めた「世界の」発展につながると主張しました。それに対して途上国を主とする多くの国は、現代の不平等な発展を前提とした自由開発を認めることによって、格差が拡大し平等が失われることを危惧し、グロチウス自由海論を超克した管理海論に則った制度構築を目指しました。自由と平等の間で、いかにして実質的平等を確保するかを模索するのが、この会議の焦点です。
議題メッセージ
近年、レアアース等の資源問題の処方箋として、深海底での資源開発が挙げられています。フロンティアたる深海底における資源開発にむけて少数の大国がしのぎを削っているのに対し、多くの途上国は絶望的なほどの遅れをとっています。これこそが、国連海洋法条約の議論において想定された「未来の状況」であり、それがおよそ30年の時を越えた「今」、到来しつつあるのです。深海底の取り扱い方法を再度振り返ってみる意義は、現代だからこそ、十分に存在します。

【参考文献・URL】
谷口正次『教養としての資源問題』(東洋経済新報社、2011年)
緑間榮『海洋海域開発と国際法』(近代文芸社、1995年)
会議コンセプト
国連海洋法条約における深海底の議論の対象は、決して国際法にとどまるものではありません。「自由・平等とは何か」という問いかけを基盤として、「南北問題」や「資源問題」にアプローチしていく、奥の深いものです。様々な分野に対して横断的にアプローチができること、これがこの会議の一つの特色と言えるでしょう。さらに、この会議のもう一つの特色は、少人数会議だということです。参加者1人1人の役割は他の会議よりも相対的に大きなものとなりますし、会議では思考し、議論することの楽しさを実感できます。関西大会を自らの成長のためのステップとしたい方にとって、必ず満足できる会議であると確信しています。南北問題や資源問題に関心がある方はもちろん、自由・平等とは何かを考えてみたい方、冷戦下の世界に触れてみたい方、海という身近なものから国際問題を考えてみたい方は、ぜひこの会議にお越しください。
海が手の届くところにある神戸で、皆さんが35年前にさかのぼり、史実に囚われない1つの「成果」を作り出すことを期待しております。
大会テーマ×議題
1977年、第三次国連海洋法会議(UNCLOS3)の第6会期の冒頭、当時の国連事務総長ワルトハイム(オーストリア)は、「UNCLOS3は、国連システムを通じて新国際経済秩序(NIEO)を創設しようとする偉大な努力の一環とみなされなければならない」のであって、「旧秩序は、もはや世界的な経済的要求を満たす能力を有していないが、努力にもかかわらず、世界の貧しい国と富める国との格差は、依然として拡大し続けている」。ゆえに、「発展途上国に対して、海の富を利用するより多くの機会を与えることは、より衡平でかつ効果的な世界的な経済制度を探求するうえで大きな支えとなる」と述べました。
上記の「NIEOの創設」こそが、南北の経済格差を是正する結果として当時考えられていたものに他なりません。豊かな天然資源を擁する深海海底の管理・開発をめぐる国際レジーム形成が大論点となったUNCLOS3は、実効性の伴わないものととらえられていたNIEOに現実性と実効性を付与しうる最初かつ最大の機会だったのです。UNCLOS3の歴史的意義の一つに、国家の経済的主権の確立を指向したNIEOを制度化するために、その目的に沿った形の新たな海洋秩序を構築する試みがなされたという点があります。UNCLOS3は、国連という場において、南北問題の具体的かつ包括的な解決案を議論した場であったと言えるでしょう。
国選びのポイント
1970年代に高揚した新国際経済秩序の具体化をめぐる議論が最大の争点となるこの会議は、大きく分けて4つのアクターが想定されます。ただし、同じアクターの中に入っているからといっても、主張の濃淡(いわゆる、過激な国と穏健な国)はもちろん存在しますし、複数のアクターを兼ねる国も存在します。下記の分け方はあくまで目安となるものにすぎないことには注意しておいてください。
一つ目は、先進国(フランス, 西ドイツ, 日本, オランダ, イギリス, アメリカ)です。
二つ目は、途上国(アルジェリア, インド, リビア, マルタ, ペルー, フィリピン, ルーマニア)です
。 三つ目は、陸上資源産出国(オーストラリア, ブラジル, カナダ, ザイール, ザンビア)です。
四つ目は、社会主義国(ソ連)です。

議題
「人Iは、生命の子宮であった暗黒の大洋を辿り、深海へ帰りつつあります。深海への人間の侵入は、人間の終焉を告げるものとなるかもしれません。しかしまた、これは全ての人々にとって平和でかつ発展的に繁栄する未来のために確固たる基礎を築く、またとない機会となり得ましょう。」
(以上は1967年11月国連総会において国連海洋法会議のきっかけとなったパルド演説から引用した)
本会議、第三次国連海洋法会議が開催された1977年当時、世界には2つの対立軸がありました。一つは米ソを軸とした東西冷戦であり、もう一つは北半球の先進国と南半球の途上国を軸とした南北対立であります。二つの対立軸は互いに全く異なる背景を持つものであり、対立劇はそれぞれの舞台で繰り広げられていました。東西冷戦は安保理や米ソの外交合戦を主な舞台としたのに対して、南北対立は国連総会や各種国際機関を主な舞台としたのに対して、各国は対立軸によって主張や協調戦略を変えていったのです。1977年はそうした二つの対立軸を巡る抗争が一つの頂点に達していた年でもありました。
そうした二つの対立軸が交錯した会議。それが本会議海洋法会議です。この十数年に及んだ会議の最大の対立点は、今会議で扱う深海底の資源問題です。このなかで、諸国は東西を巡る政治的な対立と南北にまつわる経済的、イデオロギー的な対立が複雑に絡まりあった問題に対して審議を続けたのです。
深海底という特別な技術なしには到達しえない領域にある無尽蔵の資源。その果実は到達した者が享受するべきなのか、誰もが享受できるようにすべく技術を開放し深海底に到達し得る環境を作るべきなのかといった技術供与の問題や深海底の資源が供給されることによって地上で同様の資源を産出する国々の経済に生じうる深刻な悪影響を緩和するために何か対策をとるべきではないのかという問題。そして、これらの議論の骨子たる深海底の資源は本来的に誰のものなのかという問題。これらの問題は南北対立の文脈において大きな争点となったのです。
この夏、無明の深海底で東西冷戦と南北対立という歴史の回転軸が交錯します。
今回は会議の経過を2012年に公開された当時の覚書というかたちでお知らせします。
報道官として歴史が作られる瞬間を精一杯伝えていきたいと思いますのでよろしくお願いします!!