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第10会期 国際連合 緊急特別総会(10th ESS)

議題
The Situation in Palestine
パレスチナ情勢
会議設定

募集人数41名(オブザーバー含む)
会議監督結城 栄一  
(神戸研究会 大阪大学法学部3回生)
議長西 麻由美  
(日吉研究会 青山学院大学国際政治経済学部3回生)
秘書官加藤 惠利奈
(早稲田研究会 早稲田大学政治経済学部3回生)
使用言語日本語/日本語/英語 (公式/非公式/決議)
和平のあり方ととは――――――
なぜ、2つの民族は争っているでしょうか。
なぜ、和平は達成されないのでしょうか。
そして、どうすれば和平は実現されるのでしょうか。
国割り
国割りはこちら国割りからご覧になれます。
議題解説
2008年12月26日。イスラエル軍はパレスチナ自治区・ガザを空爆しました。この攻撃は2週間ほど続きましたが、その間にイスラエル軍は陸上部隊をガザに侵攻させ、ガザを支配するテロ組織・ハマスと激しい戦闘を繰り広げました。この紛争は「ガザ紛争」と呼ばれ、結果として第3次中東戦争以後最悪の事態と招くこととなってしまいました。
この事態に対してまず、国連人権理事会がイスラエルによる攻撃を「戦争犯罪」と断罪する決議を採択しました。その後安保理でも審議され、決議1860を採択しました。安保理常任理事国のアメリカは、今まで多くのイスラエル非難決議に対して拒否権を行使してきましたが、今回の事態には棄権票を投じました。決議1860では、イスラエル軍によるガザ撤退を導くような、即時の停戦を求め、ガザへの人道支援の必要性に言及し、二国家共存のための努力を当事者そして国際社会に求めています。しかし、この決議は当事者双方に受け入れられず、今回の緊急特別総会に至ったのです。
なぜ、今回のガザ紛争が起きたのでしょうか。イスラエルは2006年以降、ガザを支配するハマスからのロケット砲攻撃に悩まされてきました。ハマスはイスラエルとの共存を否定しており、パレスチナ全土の解放を目指しています。国際社会はハマスの政権獲得を無視し、イスラエルもガザを封鎖し、人・物の流れを止めてしまいました 。そして、今回イスラエルはテロ攻撃を仕掛けてくるハマスを徹底的に排除するために、大規模な軍事侵攻に踏み切ったのです。
結果は、イスラエル軍が一方的にガザから撤退し、大打撃を受けたガザを封鎖したままです。これ以降中東和平交渉も中断を余儀なくされました。そして今でも断続的に双方による暴力が続いています。
議題メッセージ
今会議では、ガザ紛争を取り上げて、ガザにおける問題について考えていきたいと思います。ガザはオスロ合意によってパレスチナ人の領土となり、将来的なパレスチナ国家の一部とされています。しかしながら、ガザでは今回のガザ紛争だけでなく、イスラエルによる空爆や侵攻を度々受けています。ガザでの問題を考えるときに、パレスチナ問題について考えることは避けられないでしょう。パレスチナ問題はよく「民族問題」や「宗教問題」と言われますが、こうした説明はかえって問題の本質をとらえにくくしています。パレスチナ問題は、パレスチナをめぐる領土問題と言えます。また、イスラエルが公然と攻撃的な行動ができるのは、冷戦期に中東で影響力を持ちたかったアメリカの支援があるからとも言えます。今会議では、単なるアラブ人とユダヤ人の争いと表面的にとらえるのではなく、パレスチナ問題の本質やパレスチナがどのように国際情勢から影響を受けたか、について考えてほしいと思います。 2012年、熱い夏の神戸で、参加者のみなさんが「熱い心」と「クールな頭脳」で、パレスチナにおける「現実」と「理想」のギャップに果敢に立ち向かうことを期待しています。


【参考文献・URL】
高橋和夫『なるほどそうだったのか!!パレスチナとイスラエル』(幻冬舎、2010年)
阿部俊哉『パレスチナ-紛争と最終的地位問題の歴史-』(ミネルヴァ書房、2004年)
「時論公論 行き詰った中東和平交渉」
会議コンセプト
実際に今回シミュレートする総会緊急特別会合が、ガザ情勢の好転に寄与したのでしょうか。答えは否です。イスラエルは総会決議に反対し、話し合いではなく一方的にガザから撤退しました。そして現在でもイスラエルによる空爆が度々起こっています。みなさんには、2009年のガザ紛争を題材にして、現在を含め将来的なガザ情勢の安定化のためにどうすればいいのかを議論し、それを決議に残してほしいと思います。
大会テーマ×議題
国連とパレスチナの60年 ―
変わる”国連”と変わらない”パレスチナ”―
国際連合は国際の平和と安定の維持を目的として1948年に設立された。国連は集団安全保障をシステムを採用し、国際社会全体で戦争を食い止めることを目指した。しかし、その遂行な目標に国連設立直後暗雲が立ち込めた。資本主義を掲げるアメリカをはじめとした西側諸国と、共産主義を掲げるソ連をはじめとした東側諸国による冷戦の時代がやってきたのだ。朝鮮戦争を前に国連安全保障理事会は拒否権の乱用により機能不全に陥った。そんな事態を打開するために、平和のための結集決議が採択され、安保理が動けなくなった場合、総会が代わって国際の平和と安定の維持に乗り出すことなった。平和のための結集決議によって設立された緊急特別総会制度は、冷戦中には拒否権の役割を低減させることに成功し、9つの事例で緊急特別総会は開かれた。しかし、冷戦終結後イデオロギー対立は解消され、拒否権の行使回数が減っていったことを受けて、緊急特別総会制度は1回しか行われていない。それも米ソ対立ではなく、アラブとアメリカの対立によるものであった。―この第10回目の緊急特別総会である。また、冷戦終結後の国連は国だけでなく「人間」の安全をも考えるようになり、人道的回収や保護する責任の概念をもとにコソボやリビアに介入した。国連の用いる手段は60年間で大きく変容した。
一方で、パレスチナの60年間はどうだっただろうか。委任統治を行っていたイギリスはパレスチナ問題を設立されたばかりに国連に付託し、パレスチナ分割決議が採択されイスラエルが建国された。国連はイスラエルの建国を認めることによって、第二次世界大戦終結までの長い歴史の中で迫害され続けたユダヤ人に国家を与えた。それと同時に大量のパレスチナ難民が発生し、国連はパレスチナ難民の保護を求める決議を採択した。イスラエルとアラブ・パレスチナは幾度となく戦火を交え、そのたびに国連は停戦を求める決議を採択した。しかし、戦闘は一時的にしか止まらず、戦闘は繰り返された。冷戦終結後、ノルウェーのオスロで歴史的な合意がなされ、イスラエルとパレスチナの和平の機運は高まったが、互いの和平に反対する勢力による妨害が行われ、いまだに和平が達成される見込みはない。国連は和平に重要な4者(カルテット)の一員となったが、イスラエルが戦闘行為を行うと頻繁にアメリカが拒否権を行使し、安保理は行動をとれなかった。
国連とパレスチナの歴史は長い。国連はパレスチナに関して有効な手立てを打てなかったのだろうか。答えは否である。安保理決議242ではイスラエルとパレスチナの2国家共存を求めており、現在の和平交渉の中心事項である。また、総会はいまだ解決していないパレスチナ難民、エルサレム、入植地にかかる問題を毎年討議している。では、なぜパレスチナに安全は訪れないのだろうか。イスラエルはユダヤ人の安全を保障したいと考え、パレスチナ人は故郷に帰りたいと考えている。この2つを満たす解が存在しないのだ。
今回のガザ紛争の事例はどうだろうか。ガザを占拠するハマスから繰り返されるテロ攻撃から国民を守りたいと考えるイスラエル。パレスチナ人の領土とされたにもかかわらず攻撃や封鎖で疲弊しきったガザ。両者の願いを満たす解はなんだろうか。ニューヨークでこのようなことを議論している最中にもガザで、イスラエルで市民は犠牲となっている。国連大使はどうあるべきなのだろうか 。ここに本大会テーマ「国連ってなんであるの」かを考える手がかりがあるのではないだろうか。
国選びのポイント
今回のガザ紛争の場合、従来のイスラエルとパレスチナの対立軸とは少し違っています。西欧諸国はガザで主導権を握ったハマスを無視していましたが、今回のガザ紛争ではフランスなどの一部のEU諸国はハマスとイスラエルの調停に乗り出しています。一方でアメリカ・カナダ・オーストラリアはイスラエルの自衛権を支持しています。また、中東諸国もガザに関しては態度が様々です。ハマスを支援するイラン・シリア、イランやテロ組織の勢力拡大に懸念を持つサウジアラビア、エジプトなどがあげられます。ハマスによるテロ攻撃を「イスラエルへの防衛」と擁護したのは、イラン、シリア、リビア、北朝鮮などでした。反米ラテンアメリカ諸国はガザ紛争をきっかけにイスラエルと国交を断絶しました。そのほかのアジア・アフリカの国々の多くは当事者双方に停戦を求めたり、中立の立場をとりました。

青色:イスラエルを支持し、イスラエルの行動を防衛権と定義した国。
薄青色:ハマスのみを非難した国。
赤色:ハマスを支持し、ハマスの行動を抵抗権と定義した国。
ピンク色:イスラエルのみを非難した国。 緑色:両陣営に停戦を求め、いずれをも非難あるいはいずれをも非難しなかった国。
水色:公式な立場を表明しなかった国。
出典:International reaction to the Gaza War

なので、調停役として会議をまとめたい方はEU諸国、当事者やあるいはそれに近い立場で会議をしたい方はイスラエル・中東諸国・アメリカ、第3者の立場で提案を行いたい方は、アジア・アフリカ諸国、実際に議論のように議場でアメリカに対抗したい方は、ラテンアメリカ諸国を国割りに選んでもらえたらと思います。 なお、今回の設定国のスピーチはこちらからご覧になれます。
プレス
こんにちは、ESSプレスを務めます神戸研究会 山口と申します。
 ESSの議題は東エルサレムとパレスチナ占領地域におけるイスラエルの違法行為。具体的にはイスラエルのガザ攻撃の是非と停戦への方策、そしてガザの復興について話し合います。
 今会議は様々な問題が絡み合った複雑な議題です。パレスチナ人とユダヤ人との争いは19世紀まで遡り、19世紀の民族主義とシオニズムによるパレスチナへのユダヤ人の移民、1947年のパレスチナ人にとっては不満の残るパレスチナ分割決議、4度の中東戦争を経て定まらないガザの法的地位と主権、そしてイスラエルの安全。このような背景の中で起きたガザ紛争をどのようにして議論していくのか。特にイラン・シリアなどの過激派とイスラエルグループとの対立だけでなくEUや日本韓国などの国々がどのように関わっていくのかとても楽しみにしています。
 また私もプレスとして今会議に貢献したいと思っています。会議外の方々にもESSでの議論をそれぞれの大使の立場から伝えれるようなプレスを目指し、特にパレスチナ情勢について、「今」国連の大使達は何ができるのか、と考えている姿を伝えれるような報道に努めます。また積極的に大使の方々とコミュニケーションをとっていこうと思っています。
 それではみなさま、3日間よろしくお願いします!大使の方々にとってひとつでもふたつでも得るものがある大会になれば幸いです。