模擬国連は、1920年代にハーバード大学で行われた模擬国際連盟会議にその起源を遡り、今や大学の授業の一環として扱われるなど、世界の学生が参加している活動です。
日本における模擬国連活動は、1983年に当時上智大学で教鞭をとっておられた緒方貞子氏のもとに発足した模擬国連実行委員会を機に、現在では全国各地にその規模が拡大していきました。
「模擬国連」とは、参加者一人一人が世界各国の大使となり、実際の国連会議で扱われている問題などをもとに国連会議を再現することによって、国際社会が抱える問題を理解すると共にその問題の解決策を探ろうとする活動です。
模擬国連は,以下の3つの段階を通じて活動しています。
各会議に大使として参加し行動するためには、あらかじめ担当国の政策を立案し、会議においてどのような動きをするかを考えておかねばなりません。 そのために、議題や担当国に関する情報を調査・分析(リサーチ)することから会議の準備は始まります。また、議題に関する勉強会が適宜行われます。 これらを基に、担当国の政策を立案、会議での行動を考えていきます。
実際の国連会議の進行に沿って、会議は進められていきます。
会議では意思決定の下地となる決議草案を作成していきます。
その際大使はスピーチ、文書作成、他国との交渉を経て、自国の国益に有利なように会議を展開させようと行動します。
最終的には決議案の採決が行われ、自国の国益を追求しつつも国際社会にとって有益かつ実効的な解決策・対策を盛り込んだ決議を採択し、会議は終了します。
自らの政策や会議での行動を振り返り、実際の国連の会議に照らし合わせてさらに議題への理解を深めます。 他にも、大使の視点から離れ議題についてディスカッションをしたり、各大使に会議中の行動について質疑応答を行うなど、会議を振り返るために効果的な企画を実施します。 このような機会で自分の行動や思考を振り返ることにより、自らの成長の糧とします。
日本では昭和58年、緒方貞子氏(当時上智大学教授、前国連難民高等弁務官)の顧問の下、毎年ニューヨークで開かれる模擬国連会議全米大会へ日本代表団を派遣するため「模擬国連実行委員会」が設立されました。
それ以降、日本でも模擬国連活動が次第に普及し、大学や高校の授業の一形式として採り入れられるのみならず、大学生独自の模擬国連活動組織として、模擬国連委員会や関西模擬国連などが結成されました。
平成22年1月には模擬国連委員会及び関西模擬国連は活動の一層の充実・普及を目指して合併し、全国組織として「日本模擬国連」が誕生しました 。
以下、日本における模擬国連団体を紹介します。
本大会を主催する日本最大の模擬国連組織です。目的として以下の4つを掲げています。
また、日本模擬国連は事業部門、関東事務局,関西事務局の3部門により構成されます。
全国規模の模擬国連大会として、「模擬国連会議関西大会」(8月)、「模擬国連会議九州サマーセッション」(9月)、「模擬国連会議北陸大会」(11月)、
「模擬国連会議全日本大会」(12月)の4大大会が毎年行われています。
また、全米学生会議協会により国連本部会議場にて開催される「模擬国連会議全米大会」への日本代表団派遣事業も行われています。
関東事務局の下には、早稲田・国立・四ツ谷・日吉・駒場の5つの研究会と宇都宮・筑波の2つの支部があり、首都圏だけでも、およそ20の大学から約200名の学生が活動に参加しています。
会員の所属大学
関西事務局は、京都研究会・神戸研究会・北陸支部・九州支部を活動の拠点として、10あまりの大学の100名以上の学生により構成されます。
本大会の運営事務局員は、関西事務局京都研究会・神戸研究会に所属しています。
会員の所属大学
上記の団体以外にも日本国内には、仙台や名古屋、島根、湘南藤沢などに模擬国連団体があります。
このような大学生レベルでの活動だけでなく、模擬国連活動は近年高校レベルでも普及しています。
慶應藤沢高校、京都西高校をはじめ多くの高校やインターナショナル・スクールでは模擬国連活動が英語教育の一環として採り入れられています。
模擬国連活動は、今後社会に出ていく学生にとって必要とされるさまざまな能力を養成することが可能です。
したがって人材育成という観点からみて非常に有用です。
模擬国連活動はディベートと異なり、意見の異なる相手を論破し勝ち負けを決めることが目的ではありません。
互いに向き合って交渉することで、人の話を聞き、理解しようとする姿勢が身に付き、コミュニケーション能力を向上させることができます。
また、世界の国々はそれぞれに異なる文化・考え方をもっています。
会議を通してそれらを知ることで新しい視点を発見することができ、主観的でなく客観的に国際問題への理解を深めることができます。
このような問題へのアプローチ方法により、様々な物事に対し多角的視点から検討する姿勢を養うことができます。
論理的に物事を考えることは模擬国連活動において不可欠な要素です。
担当国の政策立案はもちろん、それを誰かに伝えるときや交渉の際にも論理的でなければ相手に納得してもらえないため、論理的思考や論理的説明能力が鍛えられます。
また、会議において中身のある議論をするためには、議題となっている問題の本質を見極めなければなりません。
原因を探り、解決策を模索することで、問題への取り組み方を学ぶことができます。
会議中に行われる公式スピーチでは、大人数の前で自国の立場を正確に伝える必要があります。
また、英語を用いて会議を行う場合が多くあるため、語学力の向上も期待されます。
さらに使用言語が何であっても、いかに相手に自国の考えを伝えるかが重要となってくることから、模擬国連活動はパブリックスピーキング能力の向上につながります。