2005年・前期議題

 難民―受け入れに関する包括的検討―
  
Refugees-The Problem of their Acceptance in all its aspects
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みなさんこんにちは。2005年度関西模擬国連神戸研究会前期活動の会議監督を務めさせて頂きます、岡田香織です。前期の議題は「難民」です。今回は難民問題のなかでも、特に「受け入れ」という視点から考えていきます。
では、具体的な勉強の前に「難民」を扱う意義、会議設定などを説明していきたいと思います。


【難民問題を扱う意義】
現在、「難民」として認定されている人はどれぐらいいるでしょうか。難民保護を目的としている国連の機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の調査によると、2004年1月1日現在、約960万人が難民としての認定を受けています。難民になる理由は、民族の対立や政府と反政府組織による紛争、貧困、政府との政治的意見の対立、宗教問題など、実にさまざまです。しかしながらそれらのすべてに共通して言えることは、生命の危険を感じるほど差し迫った危機であることです(「人はなぜ追い立てられるのか−難民化の力学−」より)。

では、具体的に「難民」とはどのような存在なのでしょうか。「生命の危険を感じるほど差し迫った危機」のもとにいるだけでは「難民」と認定されません。そのような危機から脱出するために、国境を越えて他国に庇護を求め、それが認められて初めて「難民」という認定を受けるのです。したがって、いくら自分自身が危機を感じて他国へ脱出したとしても、他国がその理由は正当ではないと判断した場合、庇護を受けることができないということになります。
難民保護の歴史は古く、さまざまな条約や宣言、国際機関、NGOによって実施されてきました。第二次大戦後、国際連合が発足してから現在までは特に大きな進歩のあった60年で、今会議とも大きなかかわりのある、「難民の地位に関する条約・議定書」が発効したり、UNHCRが設立されたりしました。しかしながらこのような努力にもかかわらず、難民の数は一向に減っていません。現在の国際社会においても「難民」は大きな問題のひとつと言えるのです。
先ほども述べましたが、今会議では難民の受け入れ問題に関して扱っていきます。多くの場合、難民はA国からB国へ、というように国境を越えて移動する存在です。したがって彼らが定住し、落ち着いた平和な生活を送るためには、彼らを受け入れる国家が必要です。しかし、本来彼らの受け皿となるはずの国家が、今その門戸を閉ざしつつあります。ここ日本においても、クルド人難民を送還したという事実は大きく報道されました。自分たちの国を捨て、必死の思いで庇護を求めた国家から見放された彼らは一体どうなるのでしょうか。

国際連合発足60周年にあたる今年、この60年を通じて大きな国際問題であった「難民」について「国家」としての責任を再確認し、恒久的解決に向けて新たな一歩を踏み出すことが必要なのです。

【会議の設定】
今会議の鍵となるものは、1951年の「難民の地位に関する条約」です。この条約は、難民保護に関して普遍的である一方、難民の定義が大変狭いことや、難民認定の手続きの基準について触れていないなど、欠陥も多く含んでいるといえます。また、発効してからすでに50年以上も経っており、時代に即したニーズも必要とされています。したがって、今会議ではこの「難民の地位に関する条約」を中心として、この条約に欠けているものを話し合うことで21世紀の難民保護をいかにスムーズに行うか、ということを念頭において議論していただきたいと思います。具体的な論点を示しておくと、

@ 難民の定義を再確認し、拡大する必要があるかどうか。
A 難民認定の際の手続きについてどのような共通の基準を設けるべきか。
B 難民の待遇について再確認するとともに、新たに盛り込むべき点はないか。
C 難民の受け入れについて各国がどのような姿勢で対処していくのか。

以上、4つです。この4つの論点はすべて受け入れに関してリンクしていると言えます。まず、どのような人を「難民」と呼ぶのか、というのを決めるのが定義です。論点@で、難民そのものの定義が明らかにならないと「難民保護」という概念があいまいになってしまいます。ということは、当然国家や国際機関の援助も受けられない可能性が出てくるのです。そして論点A、B、Cはその定義を基礎として、国家が難民を受け入れる際、どのような手続きを経て認定するのか、またその国家が実際難民を受け入れるとき、彼らにどのような地位を与え、どのように生活支援を行っていくのかということを話し合っていただきます。詳しくは、この後BGを読み進めていただければ理解できると思います。
また、大使の皆さんに念頭においていただきたいのは、今会議はコンセンサス(全会一致)を目指す努力をするということです。現代は、もはやどの国も難民とは無関係ではいられません。政情の不安定な国が難民を出す恐れがあることは言うまでもなく、経済・交通のグローバル化が進み、いつ、どこの国からでも「難民」としてやってくる可能性を捨て切れません。ここ日本もいつまでも難民に関しては無関心ではいられないのです。今会議の鍵である「難民の地位に関する条約」の加入も、2004年10月1日現在、142カ国となっており、難民保護の意識は確実に国際社会に根付いていると言えます。大使の皆さんには国益と世界益の両方を考慮に入れて会議に臨んでいただきたいと思います。



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