研究の部屋TOP   2005年 前期議題
前期リサーチソース

それでは次に、論点整理について振り返っていきましょう。ここでは、今まで勉強してきた知識を復習するとともに、その知識を生かして会議でどのようなことを話し合うのかについてみてきました。会議に直結する内容ですので必ず最後まで読んで、わからないところは質問メールを送ってください。

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<論点整理 議題解説者:岡田香織>
@ 論点とは
数ある難民に関する問題のなかで、実際に今週からの会議で具体的に焦点を当て、話し合う内容のことを「論点」と呼びます。今回は4つの論点を設定しました。すなわち、

論点1―難民の定義
論点2―難民認定手続きの共通基準の構築
論点3―難民の権利
論点4―難民の受け入れ

です。議題を思い出してください。今回の議題は「難民―受け入れに関する包括的な検討―」となっています。難民とはどのような存在か明確でなければ受け入れる基準があいまいになってしまいますし、認定の手続きが統一的でなければ国際社会として難民と認めることができません。となると、第三国定住がスムーズに行われなくなる原因の一つとなり、受け入れが滞ってしまいます。また、難民にどのような権利を与えるのか具体的でなければ受け入れる国家側が渋る要素を大きくしてしまいます。つまり、すべての論点は受け入れ問題にかかわることなのです。それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。


A 論点1―難民の定義
定義は難民の地位に関する条約や難民の地位に関する議定書、OAU難民条約、カルタヘナ宣言で明記されていますが、全ての国家がこれらに加入しているわけではありません。難民条約・議定書は現在140カ国以上が加入していますが、もちろんに加入の国も存在し、この時点で格差が生まれます。また、OAU難民条約はアフリカの、カルタヘナ宣言は中南米の条約・宣言であり、地域的な側面に合わせて作られています。当然それらを支持しているのはその地域ということになります。これらの条約・宣言は何条約を支持しつつも、それより一定の定義の拡大が見られます。つまり、ある国で難民と認められても、別の国では認められないことがあるのです。これは、難民条約上の定義が狭いため、条約に当てはならない者を「広義の難民」として各国の裁量によって受け入れてきたことも当てはまります。まとめると、以下のようになります。

★ 難民条約加入しているかしていないか
★ 地域的条約・宣言を支持しているかしていないか
★ 国家がどの程度広義の難民を受け入れてきたか

また、難民条約の定義が狭いため、これらを拡大する動きが見られる一方、受け入れ数を減らすため、厳格に難民条約上の難民(条約難民)しか認めないという動きが見られます。つまり、論点1では以下の対立が起こっているのです。


      難民条約・議定書に加入している⇔難民条約・議定書に未加入




      定義を拡大したい、またはすでにしている⇔定義を拡大したくない




また、難民条約の「十分に理由ある恐怖」などのあいまいな表現についても考慮する必要があります。リサーチの際は、まず担当国が難民条約に加入しているのかどうかから入るとよいでしょう。国際社会が統一的な定義を構築することによって、難民認定の際に国家による格差をなくすことができ、国際社会として難民を認定できるようになります。そうなれば、第三国定住など、受け入れもよりスムーズになるでしょう。


B 論点2―難民認定手続きの共通基準の構築
  難民条約には認定の手続きに関する規定が一切記載されていないため、各国がそれぞれの方法で認定を行っている。つまり、国際社会としては認定手続きはばらばらであり、これも国際社会として難民を認定できない要因の一つとなっています。会議では現在ばらばらの基準のなかで、各国が最低限守るべきミニマムスタンダード(最低基準)を構築することを目標としてください。またその際には「公平で客観的かつ迅速な認定」を目指すべきです。誰から見ても間違いのない認定であることは言うまでもなく、大量にやってくる庇護希望者やその保障を鑑みたとき、「迅速」であるということはとても重要だからです。リサーチの際は担当国がどのように認定を行っているかを探るとともに、UNHCRではどのような見解が出されているのかを見ておくとよいでしょう。UNHCRの見解はBG資料編に載せてあるのでご一読ください。


C 論点3―難民の権利
  難民条約は難民の権利や待遇について規定されていますが、決して完全なものではありません。特に今回は「身体の安全に関する権利」が欠如していることによるさまざまな問題について議論していただきたいと思います。難民はあらゆる場面で身体が危険にさらされています。しかしながら、難民条約では一切の規定がありません。身体の安全という面では、拷問等禁止条約の方が幅広く扱われています。それでは一体どのような問題が起こっているのか見ていきましょう。

★拘禁問題
これは難民条約に「他国に辿りついたときの取り扱いについての規定」がないことも影響しています。不法入国者として留置所などに入れられてしまう恐れがあります。入れられてしまうとそこからはとても不透明で、拷問や性的虐待を受けたという報告もあります。ヨーロッパでは大きな問題になっています。

★ 難民キャンプの軍事化・強制的徴兵
難民キャンプに反政府勢力の一員が逃げ込み、難民を盾に政府と対立するということが起こっています。いったん難民キャンプが軍事化すると、難民が兵力として使われる可能性が高いのです。

★ 難民キャンプでの水・食糧・医療へのアクセス
UNHCRの任務の一つに物質的援助がありましたが、難民キャンプなどではすべての難民に十分な物資が行き渡らないことがあります。

★ 女性への性的虐待

4つほどあげましたが、あまりこれらにとらわれず自由に意見を出してほしいと思います。


D 論点4―難民の受け入れについて
  現在、世界的に難民の受け入れ枠は減少しています。それは先進国が難民に高度な福祉を提供していたため、冷戦終了後の地域紛争による大量の難民に対応できなくなったためだといわれています。先進国は受け入れ枠そのものを減少するだけでなく、「安全な第三国概念」などで難民をやってこさせないようにする方法もとっています。このような中で、どのようにすればよりスムーズに難民は受け入れられ、定住できるのか。そのためには何が必要なのかを考えてほしいと思います。

★ 負担・責任分配、国際的連帯の精神
大領難民が発生した場合、1国に何十万もの難民が流れ込んでくるのは決して珍しいケースではありません。そんなとき、第一庇護国の負担を減らすため、国際的連帯の精神に基づき、各国が物資の援助を行ったり第三国定住として一部の難民を受け入れたりします。

★ 市民社会との協力
閉鎖的な社会は難民をよそ者ととらえますが、逆にその社会にうまく入ってしまえば定住しやすいといわれています。また、特に途上国では市民社会と協力することにより、難民と地元住民との限られた水や食糧、薪をめぐる争いもなくなるといわれています。
 
ここまで、4つの論点をひとつひとつみていきました。最後にアウトオブアジェンダについて説明して終わりにするのでもう少しお付き合いください。

E アウトオブアジェンダ
これは「議題外」ということで、これについて話をすると議論が目的と少しずれてしまうので今回は話さないでください、というものです。以下に3つ挙げますが、これについての文言が決議案などに載っていた場合、フロントの判断で削除させていただくことになるので気をつけてください。

★ 国内避難民に関すること
今回の会議は「受け入れ」ということで難民の国家間の移動に着目しているため、国内に留まっている国内避難民はアウトオブアジェンダとします。

★ 難民に関する基金創設に関すること
難民の保護は確かにお金が必要です。もちろん現在も難民に関する基金は存在します。しかしながら難民保護は第一義的に国家の責任であり、その受け入れも国家が責任を持つことです。よって基金の創設はアウトオブアジェンダとします。ただし、文言として金銭にかかわること(例:〜ドル支援する、など)はアウトオブアジェンダではないので注意してください。

★ 難民キャンプの定義に関すること
難民キャンプの定義はいまだにはっきりしたものではありません。これはとても難しい問題であり、その規模や場所などを定義するにいたってはいません。これを話すと会議がまとまらなくなる恐れがあるため今回はアウトオブアジェンダとします。今回の会議で難民キャンプとは、「難民を一時的に収容している場所」とします。

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 さて、みなさん「そろそろリサーチせないかんな〜」と思い始めている頃ではないでしょうか。リサーチは、一体どのようなことについて話し合うのかをしっかりと理解したうえではじめましょう。今回の論点整理はまさに「何について話し合うのか」についてみてきました。しっかりと理解したうえでリサーチを行ってください。また、議題解説やBGに関してわからないところがあったり、リサーチで行き詰ったりしたときは一人で悩まずにいつでもメールしてくださいね。kaori_shingaidai@yahoo.co.jpまでお願いします。