それでは、次に「国連と難民」の議題解説を振り返っていきます。
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<国連と難民・・・議題解説者:檀上洋輔>
ここでは、難民保護を行っている国連の機関であるUNHCRとUNRWAの2つを紹介したうえで、UNHCRについて詳しく見ていきました。
難民を保護している機関@;
略称:UNHCR
英語:the office of the United Nations High Commissioner for Refugees
日本語:国連難民高等弁務官事務所
創設年月日:1951年1月1日
期限:難民問題が解決されるまで(A/RES/58/153)
保護対象:世界のすべての地域の現在および未来の難民
難民を保護している機関A;
略称:UNRWA
英語:The United Nations Relief and Work Agency for Palestine Refugees
日本語:国連パレスチナ難民救済事業機関
創設年月日:1950年5月1日
期限:2008年6月30日
保護対象:パレスチナ難民
現在、国連の中には2つの難民保護機関があります。UNHCRは世界のすべての地域の、現在および未来の難民を対象としており、1951年に創設されました。同年に採択された「難民の地位に関する条約」では時間的制限と地理的制限がついていましたが、UNHCRの保護対象は制限がついていません。実際には難民だけでなく、庇護希望者、避難民、帰還民、国内避難民まで幅広く援助しています。また、主にパレスチナ難民を扱うのがUNRWAとなっていて、UNHCRは一部を除き、パレスチナ難民は保護対象としていません。しかしながら、2000年の緒方貞子元高等弁務官は退任演説で、「UNHCRもパレスチナ難民の保護を保護していかなければならない」と述べています。それではUNHCRについて詳しく見ていきましょう。
<UNHCRの目的>
1.難民の人権保護
2.難民問題解決のための国際的協力促進
難民は国家の保護が受けられないために国際的な保護を必要としている存在です。UNHCRはそんな難民たちに対し、国家の代わりとなって保護を与えます。また、UNHCRは難民問題の恒久的解決の方法として、以下の3つを掲げて活動しています。
@ 本国への自主帰還
A 第一庇護国での定住
B 第三国での定住
@ もっとも理想的とされている解決方法で、迫害を受ける恐れがなくなったら自らの意思によってもとの国へ帰ることです。
A 第一庇護国とは、難民が迫害の恐れのある国から逃げていって最初に保護された国です。近隣諸国であることが多く、地理的・文化的に近いために定住しやすく、もし迫害の恐れがなくなればすぐに帰国することができます。
B 第一庇護国から、また別の国へ行き、そこで定住することです。先進国であることが多く、福祉的には充実した保護が受けられる可能性が高い反面、文化的相違も大きく、帰国も難しくなります。
<UNHCRの任務>
活動する上での原則:政治的な活動はダメ!
人道的・社会的に活動しなければならない!
これは、UNHCRの活動の原則や内容を定めていて、UNHCRの活動の法的根拠となっている「高等弁務官事務所規定」の第9条に定められています。政治的な活動は禁止されていますが、UNHCRが資金を多く提供してくれる国に有利に働くような活動をすることや、冷戦当時だと、西側の難民ばかり助けて東側には一切援助しないなどが例としてあげられます。
UNHCRの任務は主に以下の5つです。
@ 各国政府に、難民の入国・在留を許可し、一定の保護を与えるよう要請
A入国・在留・保護に関する国際的基準を作って各国に守ってもらう
B各国による協力の下、物質的援助を含む保護活動を行う
C国際条約の適用に監督
D難民の数・状態、難民に関する法令について各国から報告を受ける
先ほど、UNHCRの活動の法的根拠として高等弁務官事務所規定を挙げましたが、難民条約も法的根拠の1つとなっています。第一回勉強会では、難民条約には入国・在留に関する規定がない、ということを確認しました。言い換えれば各国政府は、難民を入国させる義務はないということです。UNHCRはなるべく難民を入国させ、保護を与えるよう各国に要請しています。また、規定がないために、入国・在留・保護に関して各国は自国の裁量に基づいて行っているため、国によって差が出ています。UNHCRは統一的な国際基準を作って各国に守るよう要請しています。物質的援助は、現在UNHCRの活動の中でも大きな割合を占めるものであり、難民キャンプへ水・食料・衣料・テント・医薬品などの物資を提供しています。国際条約とは、ここでは難民の地位に関する条約のことです。D似関しては、難民条約にも同様のことが規定されています。
<UNHCRの活動を決めている機関>
★高等弁務官計画執行委員会(EXCOM)
・EXCOMはUNHCRの統率機関
・66の国の代表団で構成
・UNHCRの年次計画の進展や予算の使用状況についての評価・再検討
・UNHCRの次年度の物質的援助計画や予算の策定についての設定・認可
★総会(General Assembly)
・UNHCRは総会の補助機関
・総会決議によりUNHCRに新たな権限を付与
★経済社会理事会(ECOSOC)
・UNHCRはECOSOCの補助機関
・EXCOMの加盟国を選出
EXCOMと略されるものは国連機関の中で多くありますが、ここでは、UNHCRのEXCOMのことです。EXCOMは前年度の活動について評価し、予算や援助計画についても認可する権限を持っています。UNHCRは総会とECOSOCの補助機関であるため、この2つの機関から出た要請には従わなければなりません。これまでにも、大量難民が発生したときなど、総会が保護するよう要請することでUNHCRが動いた例が多くあります。UNHCRは基本的に大量難民に対する援助を行っています。
<UNHCRの活動資金>
すべて任意でまかなわれており、国家・多国籍組織・個人を収入源としています。HPなどからも簡単に寄付できます。収入の総額は約10億ドルで、3分の1はアメリカが出しています。また、急に大量の難民が発生したなど、緊急時には総会で事前に承認を取ったあとならば任意拠出金を求めることができます。これはUNHCR設立時、冷戦構造を予見していたアメリカの強い主張によって規定されました。これによって、自分の敵国で大量に難民が発生した場合や大量に難民が流入した場合、総会で任意拠出金についての承認を拒否することで、相手国の国力を弱めることを意図したものだと言われています。支出については、難民援助用の物資や輸送の手配に使われるほか、適切な民間団体には難民援助用に資金が提供されています。UNHCRは単独で行動しているのではなく、多くの国際機関、NGOとともに難民の援助を行っているのです。
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以上、「国連と難民」について振り返っていきましたが、いかがでしたか。何かわからないことがあれば、kaori_shingaidai@yahoo.co.jpまでお願いします。また、国割り表をまだ提出されていない方はお早めに上記のアドレスまで送ってください。