文責:近藤真由美

■ BG2章―紛争予防とは (BG P18~P30)

1.「平和への課題」の四つの段階を挙げ、それぞれの特徴を簡単に述べてください。

 

<解答例>

・予防外交

争いの発生や現存する争いの紛争への発展を未然に防止したり、紛争の拡大を防止する措置(信頼醸成措置、事実調査、早期警報、予防展開、非武装地帯の設置)。この中で、画期的なものとして挙げられるのが、予防展開である。予防展開とは、紛争が発生する以前においても、紛争発生の危険が迫っていれば国連要員を現地に派遣することである(原則、派遣に対する全当事者の同意が必要)。

 

・平和創造活動

基本的には、「国連憲章第6章にもとづく平和的手段を通じて紛争当事者を停戦合意に導き、平和を創造すること」であるが、注目すべきは「平和的手段による平和創造」がうまく行かない場合には、憲章第7章下の強制措置を取ることも可能であるとしていることである。→平和強制部隊の設置

 

・平和維持活動

停戦状態の維持を目的とする活動(停戦監視、兵力引き離し等)。大事なこととしてPKO派遣に対する当事者の合意」「任務が明確で実行可能」などが挙げられる。人員の不足、財政難が問題である。

 

・平和構築活動

平和創造、平和維持によって生まれた「平和」の状態を強化、安定させ、紛争の再発を防止する活動。任務は武装解除や難民の送還、選挙の監視、インフラ整備、教育改革など多岐にわたる。

 

☆ポイント

@予防外交・・・・・紛争発生前に展開、全当事者の合意が必要

A平和創造活動・・・憲章第6章下の紛争の平和的解決に加え、第7章下の強制措置も可

B平和維持活動・・・停戦維持、PKO派遣受け入れ合意、任務の明瞭性、機動性

C平和構築活動・・・紛争の再発防止、多岐にわたる任務

 

これらをおさえておきましょう。

 

 

2.なぜ、冷戦後紛争予防の必要性が叫ばれるようになりましたか?

 

<解答例>

あくまでも仲介役であり当事者の協力を必要とするPKOにとって、停戦合意が簡単に破られたり、維持すべき平和のない状況で活動するには限界がある。冷戦後に国内紛争が増加する中、PKOはこのような限界に直面した。実際、停戦合意(すぐに破られてしまうようなうわべだけの停戦合意と言える)後に派遣された多くのPKOが失敗したため、紛争が発生してしまった後ではなく、発生前(まだ一定の平和が存在する状況)に何とかしようではないかという考えが注目されるようになった。さらに、平和執行型のPKOの失敗(ソマリア)や、紛争の解決として軍事力に訴える方法が説得力を失ってきたことも理由に挙げられる。

 平和強制行動の失敗により、さらに紛争の発生を未然に防ごうという考え方が強調されるようになったという流れを確認しましょう。

 

 BGの第2章の設問にはもう1問設問があるので、その解答も載せておきます。

 

 

※予防外交の広義、狭義を述べなさい。また、国連によって再定義された予防行動とは、どのようなものですか?

 

<解答例>

狭義:憲章6章下の紛争の平和的解決にもとづく手段によって紛争を未然に防ぐこと。

 

広義:狭義だけに留まらず、紛争の拡大防止や再発防止など、紛争への取り組み全体。

 

予防行動:予防外交を当事者の合意を前提とする交渉・仲介・調停など外交手段を通じて紛争を予防する活動として位置づけし直し、その予防外交に代わる新たな用語として使用されることになった。また、当事者の合意を必要としない平和強制活動は、予防行動の範疇から除外された。

 

                      解答例作成者:井床利世(BG2章担当)

 

■ BG3(1)―紛争予防の活動 (BG P31~P48) 

3.三つのケース(ソマリア、ルワンダ、旧ユーゴ)を概観して、紛争予防を試みた各PKOの活動がなぜうまく機能しなかったのか、その根幹となる要因を挙げてください。

 

(a) ソマリア

 

<解答例>

ソマリアでのPKOの特徴は、PKO史上初めて「平和執行型」の任務を負ったという点にある。伝統的PKOであった第1次国連ソマリア活動(UNOSOMT)が、歯止めの利かない内戦と人道危機に対する援助活動の停滞、という二重苦の現状を前に、何一つ有効な手段を講ずることができなかったことを受け、米軍主体の多国籍軍(UNITAF)とそれを引き継ぐ国連PKOの投入という一連の作戦が決まった。この作戦におけるPKOの性質を決定づけたのは、「武装解除」の任務をめぐる議論であった。武力衝突を回避するためには、その各勢力の武装を解くことで成り立つという意識のもとで、介入側による「武装解除」の必要性が叫ばれたのだが、UNITAFがこの任務を受け入れなかったことで、その後を引き継ぐPKOは、「武装解除」の任務を遂行する以上、それ相応の装備が必要となってくるわけであり、結局、多国籍軍を引き継ぐことになった第2次国連ソマリア活動(UNOSOMU)は、必然的に「平和執行型」という性質を帯びざるをえなかった。この点が、PKOの持つ本質的な限界を露呈することになり、この野心的なPKO活動はほとんど機能を果たすことができなかったことが、ソマリアでの失敗につながった大きな要因である。それに加え、アイディード派に対する報復的な感の否めない措置は、明らかに国連が冷静さを失っていたことを物語るものである。アイディード派を叩くことが紛争解決につながることではないはずである。この判断は、紛争予防をするアクターとしては問題があったのではないだろうか。

 

☆ポイント

@「平和執行型」の任務

A冷静さを失った国連の判断

ここをおさえておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

(b) ルワンダ

 

<解答例>

ルワンダ内戦の重大な問題は、いわゆる「ジェノサイド」という人道危機を防ぐことができなかったことであり、これが完全な不可抗力ではなかったと言えることである。ルワンダにおける民族対立(フツ族とツチ族)は、以前からの問題となっていたことであり、長期に渡るツチ族政権から多数派であるフツ族政権に替わって以降、フツ族によるツチ族への弾圧も公然と行われていたわけであるから、ルワンダ問題の深刻さは、近隣諸国はもとより、国際社会も十分に認識していたはずである。その上、ジェノサイドの発生以前から現地から何度も大規模な武力衝突を含めた新たな人道危機の危険性が通報されていたにもかかわらず、ジェノサイドを防ぐことができなかったのは、国際社会の対応があまりにも軽率で遅すぎると言わざるを得ない。この冷淡な対応を生み出したのは、ソマリアでの痛い教訓とルワンダに対する魅力の欠如なのである。このとき展開されていた国連PKOである国連ルワンダ支援団(UNAMIR)はジェノサイド発生以降、ただでさえ有効な措置を講ずることができないのに、要員殺害事件を機にその規模を一気に縮小することになる。この結果、UNAMIRは存在しないのと同然であり、フランス軍の主導による多国籍軍が展開するまでに、ルワンダでの最悪の事態は誰にも邪魔されずに急速に進行していったのである。

 

☆ポイント

@早期警報を受け取り早期行動に移らなかった、国際社会の対応の不備

A戦略的価値のない国への国際社会の冷淡な反応

 

 

(c) 旧ユーゴ

 

<解答例>

・クロアチア紛争

クロアチアに派遣されたPKOである国連保護軍(UNPROFOR)は、伝統的PKOの原則である「中立性」の所在が大きな焦点となった。連邦からの独立を求めるクロアチア人とそれを阻止したいセルビア人という対立構図であるが、ユーゴ連邦全体では多数派であるセルビア人はクロアチア内では少数派となり、この状態に鑑みてUNPROFORは、セルビア人多数居住地を「保護地域」に指定した。この地域では、非武装化を大きな任務としていたわけであるが、なかなか進展が見られず、その一方でセルビア人勢力は保護地域の名の下に、民族自決を根拠に「セルビア・クライナ共和国」の設立を一方的に宣言し、いわば共和国内部に新たな共和国が存在するという異質な状況に陥った。このように、あたかもセルビア人勢力による保護地域の支配が事実化するような形となり、その上非武装化も一向に進まない状態に、クロアチア側としてはPKOの存在意義に疑問を投げかけるのは当然のように思われる。結果としてこの構図にはまってしまったUNPROFORは、その存在自体が、極端に言えば、紛争当事者双方の政治的和解を遠ざけるような影響を与えてしまったといえる。

 

・ボスニア紛争

ボスニア・ヘルツェゴビナでは、3つの勢力(セルビア人勢力、クロアチア人勢力、モスレム人勢力)による「民族浄化」という重大な人道危機に陥ったが、その現場にもUNPROFORは展開されていた。クロアチアに展開していたUNPROFORがボスニアでの飛び火を受けて、展開の範囲を拡大するわけであるが、人道危機が深刻になっていくにつれて、伝統的PKOから平和執行型(結局この性質は内包されたまま表面に出ることはなかったが)へとその性質を異にしていくが、このプロセスで結局は最悪の事態である「民族浄化」という行為を防ぐことはできなかった。それは、ある問題の顕在化に対してでしか対応できないPKOの限界とも言えるだろう。つまり、潜在的な問題に対しては、既存のPKOの枠では非常に対応が困難であるということである。潜在的問題への対処法としては、マケドニアによる「予防展開」というのがあるが、これもあくまでも受け入れ側の合意が前提となっていたわけであるので、ボスニア情勢では、「予防展開」のような潜在的問題への対応をとることは非常に困難であったといえる。この点もPKOの限界をはっきりと示す点であろう。

 旧ユーゴは議題解説ではカバーしませんでしたが、BGを参照しておいてください。その上で質問があれば、メールでもよいですし、直接近藤、西山さんに尋ねてもらってもよいです。

                    解答例作成者:西山嘉威(BG3(1)担当)

☆その他―質問などあればどうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       大学        学部        学科 氏名         

近藤真由美(betsy_mayumi@yahoo.co.jp