| 今年は日本にとって1956年の国連加盟から50周年という節目の年であたります。また、国連創設60周年の昨年と今年の2年間、日本は非常任理事国とはいえ国連安全保障理事会のメンバーとして国連の中枢で意思決定に深く関わっています。安保理常任理事国入りを目指す努力と重なり合い、国際社会における日本の発言や選択が注目されています。 今日の世界には、一つの国、あるいは一つの地域内の国々だけでは解決できないさまざまな問題があります。また、国際社会が連帯していくためには、その拠り所となるような理念や行動計画も必要になるでしょう。そうしたとき、国際の平和と安全にかかわる問題から社会経済発展、環境、人権などについての課題まで、全世界的な視野で、全世界のほとんどの国の人々が参加して議論をし、権威のある決定のできる機関は国連をおいてほかにありません。具体的な問題解決のため、世界各地で現地に密着し、現場のニーズに対応した活動をするための中心的な役割を果たすのも国連の機関です。
しかし、これらの国連の政策や活動が、どのような政治過程を経て形作られ、どれほどの予算で、いかなる役割分担を通じて実行に移されているのか。さらに、国連の潜在力をより多く引き出し、より効果的な活動に結びつけていくにはどのような工夫が必要なのか。こうした問いに関しては、机の上だけの勉強ではなかなか実感がわきません。また、国連の重要な加盟国である日本としては、自らの国益ばかりでなく、広く国際社会の公益の実現のために国連を積極的にリードするという発想が自然ににじみ出てくるくらいの心構えをはぐくむことも必要なのではないでしょうか。
模擬国連活動は、国連の会議場で繰り広げられる多国間外交を模したロール・プレーを学生たちが行うことにより国際社会の問題解決に取り組む試みです。ここでは教科書だけでは得られない当事者意識や実務的な思考が試されます。お互いの利害を見極めながらも工夫と説得と調整を通じ、共通の基盤を広げ、共通の言葉で合意を表現していこうとする知的作業といってもよいと思います。
ずいぶん前の話、1983年に米国留学中、私は国連本部を使った本格的な全米大会に参加し、その面白さと有益さに魅了され、全米大会に次年度より日本から派遣するチームも受け入れてもらえるように要請し、合意を得て帰国しました。上智大学に復学した私は、緒方貞子教授(当時)のゼミで共に学んでいた仲間たちとチームを編成し、勉強会を始めたわけですが、この活動の素地が今日まで続くほど強固なものとなりえたのは緒方先生からの力強い応援と助言があったからにほかなりません。日本国際連合協会とその学生連盟の協力も不可欠でした。
こうして始められた日本国内での模擬国連は、後輩たちのたゆまぬ努力と情熱に引き継がれ、いまでは日本全体で活発な活動が続けられています。この関西でも学生グループが熱心に活動をしている様子を見て、いつも意を強くしています。模擬国連活動に取り組むことで、学生たちは、観念的な理想主義ばかりに目を奪われず、現実主義的な発想をもちながらもよりよい世界に向けた集団的な行動の可能性を広げていくために創意工夫をする醍醐味をきっと感じ取るに違いありません。これは、まさに今日、国連改革を通じて、どのような国連と、どのような世界を築いていくべきなのかを考えていくことにもつながる重要な活動です。本活動に幅広いご協力を賜り、一人でも多くの学生たちにこうした機会が開かれますことを願ってやみません。この機会に、関係各位の強いご支援とご指導を改めて心よりお願い申し上げます。
大阪大学大学院国際公共政策研究科 教授 星野俊也
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